天朗気清、画戲鑑賞

三元論を基軸とした論理学探求の旅路へ

炎とレモン

Flammen & Citronen

私:2008年の映画「Flammen & Citronen」を簡単に紹介してくれる?

 

ChatGPT:『Flammen & Citronen(邦題:誰がため)』(2008年)は、第二次世界大戦中のデンマークレジスタンス運動を描いた映画です。この映画は、実在したレジスタンスのメンバー、ベント・ファウストルップ(Flammen)とヨルゲン・ハウゲン・シュミット(Citronen)の活動に焦点を当てています。


物語は、ナチス・ドイツに占領されたデンマークを背景に、二人のレジスタンス戦士がデンマークの自由のために闘う様子を描いています。彼らは、ナチスの協力者や情報提供者を暗殺する任務を担っていました。映画は、彼らの個人的な犠牲やモラルの葛藤、そして彼らの行動が周囲の人々に与える影響に焦点を当てています。


『Flammen & Citronen』は、そのリアルな描写と強烈なキャラクター造形で高い評価を受け、デンマークだけでなく国際的にも注目されました。監督はオレ・クリスチャン・マドセンで、主要キャストにはターロ・ラーデム(ベント・ファウストルップ役)、マッツ・ミケルセン(ヨルゲン・ハウゲン・シュミット役)が名を連ねています。

 

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 実話を基としたデンマークの戦争サスペンス映画。俳優マッツ・ミケルセンの存在感は少し希薄である気がするが、全体としては静かな重々しい雰囲気や景色が十分に描かれている。ただ、カメラワークの点で、何か所かYoutube動画や日本のバラエティ番組のような性急なズームを行うシーンがあり、それだけはどうしても映画作品としての品質の低さを感じてしまった。(重厚な映画であんな軽率なカメラワークがどうして許されたのだろう。デンマーク映画でよく見かける撮影手法なのだが、個人的にはどうにも受け付けない。)
 原題の「Flammen & Citronen」は、作中に登場する二人の主人公のコードネームである「炎(Flame)とクエン(Citron)」を意味する。クエンとはレモンに似た欧州の果実で、別名がシトロン。疲労回復効果で有名な栄養素「クエン酸」のクエンはこの果実に由来している。原題の「-en」は「~の人」を意味するので、正確に日本語に直訳をすると『炎の人&クエンの人』が題名となる。
 この原題の邦訳は大きく変わって、「誰がため(だがため)」となっている。主人公の二人は「祖国のため」「家族のため」「世界のため」に敵であるナチスの人員を暗殺しているが、自分たちの行動が本当にそれらの信念の実現に貢献しているのか懊悩する。そのような物語の背景を捉えた意訳として「誰がため」の邦訳が決まったものと考えられる。
 しかし──それであっても、「誰がため」は少々その背景の描写表現としては不十分であると感じる。そもそも「誰がため」は現代語ではなく、古文の表現(代名詞「た」+格助詞「が」)を引用したもの。これが用いられた最も有名な映画は、1943年製作の戦争映画『誰が為に鐘が鳴る(For Whom the Bell Tolls)』。おそらくその響きの良さから今回の「Flammen & Citronen」にも使われたのだ。それは問題ないが、主人公達の心の苦しみと向き合うのなら「に」がどうしても必要である。「誰がために(自分たちは人を殺しているのだろう?)」という心情が十分に反映できないと感じるからである。
 しかし、彼らは特定の人の為ではなく、「祖国」「平和」の為にも戦っている。となれば、「誰」と限定する事も、私としては不十分な邦題であると感じる。強いて言えば「何」が適切ではないだろうか。したがって、もし古語をそのまま採用して上述の観念を反映させる場合、邦題は「何がために(ながために)」がより感覚的に適切であると感じる。
 もっとも、それでも「何がために」では何の映画かよく分からず、鑑賞者の側としては理解度の接点が弱い。私は『炎とレモン』で良かったのではないかと考える。(クエンやシトロンは、日本では大多数に通じないので、そこは妥協するべきだ。)この題名であれば、「炎とレモン?どういう意味だろう?→工作員のコードネームなのか→そんな歴史が第二次世界大戦デンマークであったのか」といった具合に、興味を誘引させる事が出来る。

 

※画像:DALL-E

 

作品紹介

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著作紹介("佑中字"名義作品)
呑気好亭 華南夢録

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