天朗気清、画戲鑑賞

三元論を基軸とした論理学探求の旅路へ

原作者と製作者の解放型と閉鎖型

The Founder

私:2017年製作の映画『The Founder(邦題:ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ)』を簡単に紹介してくれる?

 

ChatGPT:『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』(2017年)は、ジョン・リー・ハンコックが監督し、マイケル・キートンが主演を務める伝記映画です。この作品は、マクドナルドという世界的なファーストフードチェーンの創業と急成長の背後にある物語を描いています。

映画の中心人物はレイ・クロックというビジネスマンで、彼は1950年代にカリフォルニア州サンバーナーディーノでマクドナルド兄弟が運営するハンバーガー店を訪れます。その店の効率的な運営方法と革新的な「スピード・サービス・システム」に感銘を受け、クロックはフランチャイズの権利を得て、自らがそのビジネスモデルを全米に広めることを決意します。映画は、クロックがどのようにしてマクドナルド兄弟との関係を築き、時には狡猾な方法で彼らを出し抜きながら、マクドナルドをアメリカ国内外に拡大していく過程を描いています。

この映画は、アメリカンドリームを追求する中での倫理的ジレンマや、ビジネスの世界での野心と利害の衝突を浮き彫りにしています。

 

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"Danny Dreamer is at it again!(夢見るダニーちゃんのおでましね!)"

 

 よく空想に耽っている息子を目にして、彼の母親がよくそう茶化していたらしい。Dannyというのは彼の愛称ではなく、おそらくDaydreaming(白昼夢)を語呂合わせした造語らしい。田舎のファーストフード店舗を世界企業に引き上げた実業家、レイ・クロックの昔話だ。

 空想家が成功を夢見続けて50年以上。レイは自分の会社プリンスキャッスルセールスを立ち上げて、シェイクを一度に複数作れるマルチミキサーという装置を自ら販売していた。当初はまったく売れず、第二次世界大戦に突入した後は装置販売そのものが不可能となったが、戦後になるとシェイク需要が一気に高まって事業は急成長。ある年は自分ひとりで1年に8000台ものミキサーが売れたらしい。単純計算で1日に22台のミキサーを売り捌く必要があるから、営業マンとしての手腕は天才的な所があったと言えるだろう。

 本作はこの時分から物語の幕が上がる。物語の娯楽性を上げる為に事実のテーマパーク化(意図的な誇張)がなされており、レイは人生の袋小路に入り込んだしがない中年男として描かれている。しかし、彼はこの時点で実業家として一定の成功を収めているので、そこれは頭の中で事実を修正しておくと良いだろう。またその後、物語の中のレイはマクドナルド兄弟(リチャード&モーリス)から奪い取るようにマクドナルドシステムを買収しているが、このあからさまな対立関係についても事実ではないと指摘されている。これも映画における事実のテーマパーク化だ。マクドナルド兄弟は買収によって得た利益により十分な財産を手にし、優雅な引退生活を送る事が出来たと言われている。

 もっとも、映画の中で描かれていたレイの「創始者(原作者)」発言と兄モーリス・マクドナルドの苛立ちは事実として存在したようだ。レイはマクドナルド兄弟が開発した革新的なハンバーガー販売システムに若干のアップデートを加えて投資家に拡散させた人物であり、それは厳密には「製作者(プロデューサー)」であって「原作者」とは言えない。しかし、レイは自分こそがマクドナルドの原作者であると吹聴した。

 確かにレイがいなければマクドナルド社が世界的成功を収めなかったのは紛れもない事実なので、レイの気持ちが分からないではない。しかし、一方で本当に「マクドナルドの原作」をゼロから生み出した兄モーリス・マクドナルドの想いは複雑であった。その忸怩たる想いも十分に共感できる所だろう。(尚、弟リチャード・マクドナルドについては、それほど原作に対しての執着心は無かったらしい。)

 生活・文化・社会のあらゆる人間の創造的活動には、このような「原作」の問題が常に付きまとう。今年1月に日本において大きな報道として取り上げられた漫画家・芦原妃名子さんの自殺事件は、まさにその「原作」を巡る対立・衝突・分断の結末として生じてしまった。自分の創造した事物・事象が他人に奪われる事は、場合によって子供を他人に奪われるような失意と絶望を感じるものだ。

 私は弟リチャード・マクドナルドのような「それが生活・文化・社会の為になるなら、自分のオリジナルを自由に使ってくれて構わないよ」という解放型であるが、もちろん創造者の中には兄モーリス・マクドナルドのように「せめて原作を創造した自分たちに敬意を払ってくれ」という閉鎖型を取る者もある。この原作の事物・事象に対する二つのスタンス、解放型と閉鎖型については、次の定義を構築する事が出来る。

 

解放型:

社会通念上の規範・良識・美徳に反しない限りにおいて、原作を用いた事物・事象が生活・文化・社会の充足と向上に役立つと十分な根拠を以て確信し得る場合、自由に原作へのアプローチを行って良いものとする。

 

閉鎖型:

原作者が有する規範・良識・美徳に反しない限りにおいて、原作を用いた事物・事象が原作者の充足と向上に役立つと十分な根拠を以て確信し得る場合でなければ、自由に原作へのアプローチを行う事は許されない。

 

 原作を生み出す者も、それを用いる者も、お互いに自分のスタイルをはっきりと明言しておくべきだろう。そして規模の大きな活動が予定されているのなら、原作者と製作者は婚前契約のように解放型ないし閉鎖型の詳密な契約書を取り交わしておくべきだろう。

 

※画像:DALL-E

 

作品紹介

 

著作紹介("佑中字"名義作品)
呑気好亭 華南夢録

呑気好亭 華南夢録

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