天朗気清、画戲鑑賞

三元論を基軸とした論理学探求の旅路へ

【機胡録(水滸伝+α)制作メモ 046】王英

王英

※補足1:生成画像は全てDALL-E(Ver.4o)を利用している。

※補足2:メモ情報は百度百科及び中国の関連文献等を整理したものである。

※補足3:主要な固有名詞は日本訓読みと中国拼音を各箇所に当てている。

 

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水滸伝水滸伝/shuǐ hǔ zhuàn)』の概要とあらすじ:中国の明王朝の時代に編纂された、宋王朝の時代を題材とした歴史エンターテイメント物語。政治腐敗によって疲弊した社会の中で、様々な才能・良識・美徳を有する英傑たちが数奇な運命に導かれながら続々と梁山泊(りょうざんぱく/liáng shān bó:山東省西部)に結集。この集団が各地の勢力と対峙しながら、やがて宋江(そうこう/sòng jiāng)を指導者とした108名の頭目を主軸とする数万人規模の勢力へと成長。宋王朝との衝突後に招安(しょうあん/zhāo ān:罪の帳消しと王朝軍への帰属)を受けた後、国内の反乱分子や国外の異民族の制圧に繰り出す。『水滸伝』は一種の悲劇性を帯びた物語として幕を閉じる。物語が爆発的な人気を博した事から、別の作者による様々な続編も製作された。例えば、『水滸後伝(すいここうでん/shuǐ hǔ hòu zhuàn)』は梁山泊軍の生存者に焦点を当てた快刀乱麻の活劇を、『蕩寇志(とうこうし/dàng kòu zhì)』は朝廷側に焦点を当てた梁山泊軍壊滅の悲劇を描いた。

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王英(おうえい/wáng yīng)

 

<三元論に基づく個性判定>

29番 **強い生存欲求**、**とても弱い知的欲求**、**とても強い存在欲求** - **「人懐っこい実践家」** - 他者との親密な関係を築きながら、実際の活動に力を注ぐ。

 

<概要>

王英(おうえい/wáng yīng)は"憎めないちっちゃなスケベ親父"のイメージの強い人物。あだ名の「矮脚虎」は「短い足の虎」を意味し、強靭だが背丈が低い様子を示している。両淮の出身で車夫の家庭に生まれたのだが、強盗事件に関わって捕縛。牢屋に入れられたが脱獄し、清風山の山賊勢力に加入。燕順(えんじゅん/yàn shùn)、鄭天寿(ていてんじゅ/zhèng tiān shòu)と共に頭領となり、山賊集団を率いる身となる。清風山を通りかかった宋江(そうこう/sòng jiāng)と知己を得て、仲間の燕順(えんじゅん/yàn shùn)が彼に平伏した事から自分も宋江(そうこう/sòng jiāng)に平伏。宋江(そうこう/sòng jiāng)が危機に陥った際、命を賭けて大暴れをして彼を救出。この事件後、清風山勢力が梁山泊勢力に合流。梁山泊勢力と祝家荘が衝突した際にも活躍し、ここで敵軍として出会った扈三娘(こさんじょう/hù sān niáng)を妻に迎える。百八人の英傑たちが集結した大聚義(だいしゅうぎ/dà jù yì)の際には序列58位に定まり、妻の扈三娘(こさんじょう/hù sān niáng)と共に「三軍内検察管理騎兵隊長(騎兵・歩兵・水軍の横断調整役及び情報工作役の騎兵隊長)」に任じられた。結婚後も女好きの悪癖を引きずるも、戦場では常に妻の扈三娘(こさんじょう/hù sān niáng)と共に活躍。そして最終戦となる方臘(ほうろう/fāng là)の征伐戦において、睦州で妻と共に殉死した。死後、朝廷は彼を義節郎に追封した。

 

<原型と評価その一>

「王矮虎(王英)」と「一丈青(扈三娘)」という夫婦の組み合わせは、元の雑劇で既に登場が見受けられる。関漢卿の『緋衣夢』には「比及拿王矮虎,先缠住一丈青」という句があり、水滸劇『王矮虎大鬧東平府』にも「某乃王矮虎是也,这的是浑家一丈青」という句がある。小説『水滸伝』を書く際、作者の施耐庵(したいあん/shī nài ān)がこの夫婦のモチーフを参考にした事はほとんど間違いが無い。作者は更に王英(おうえい/wáng yīng)の人物像に肉付けをし、「徹底した女好き」のという性質を与えている。結果、彼は次のような評価を受けている。

 

- **余象斗**:矮虎は劉高の妻(山賊行為で生捕りにした清風寨知事の妻で、後に宋江が窮地に陥る事件に直接関わる毒婦)をひどく愛していた事から、その好色の心が重い事がよく分かる。また、燕順が清風寨と大衝突を起こした際に彼女を殺した時、なぜ殺したと争いを望んだ事からも、王矮虎の好色さと義理を顧みない性格が見て取れる。王矮虎は梁山の頭領としても、扈三娘の夫としても、その資質には欠ける所があった。

 

- **陳忱**:梁山泊の好漢たちは基本的に禁欲的であるが、王矮虎だけは徹底して好色である。しかも、梁山泊では酒にめっぽう強い者が多い中で、彼だけが酒を飲まないのも独特である。

 

<評価その二>

だが、王英(おうえい/wáng yīng)という人物は視点の角度を変えるとまた別の明るい側面が見えてくれる。そして、私はどちらかと言えばその明るい方の性質に注目している。例えば、彼は次のような行動選択に及んでいる。

 

宋江に平伏する燕順を憎んでいない:いくら宋江の名声が高く知れ渡っていたとしても、一役人に頭を下げる山賊など存在しない。しかし、清風山勢力の第一頭領である燕順は無条件に宋江を崇めた。王英は宋江に従う燕順に対し、劉高の妻の件で反論はしたのだが、燕順はほとんどこれを無視。普通なら「面子を潰された」と怒り狂う場面であるが、王英はこれを後腐れなく素直に受け入れている。器が大きい。

 

②なんだかんだでずっと扈三娘の隣にいる:現代ではジェンダー問題もあってあまり見かけなくなったが、『うる星やつら』の主人公である諸星あたる、『シティーハンター』の冴羽獠といった具合に、往年の娯楽作品には「憎めない浮気性の男性」がよく描かれていた。この類型の人物は自分の性欲を包み隠さず素直に表現するが、そこに必要以上の生々しさがなく、心底ではヒロインに対する深い情を示している。王英はまさにそうした類型に属するキャラクターであると考えられ、最後の最後まで妻の扈三娘の隣にいる。下半身は忙しそうだが、心は一途である。

 

③そもそも「矮脚虎」なんていう意地悪なあだ名を付けられても平然としている:言ってみれば、彼はこのあだ名によって「短足野郎」とおちょくられているのだが、まったく気にしていない様子であり、むしろ皆がそう言って楽しんでくれている事を喜んでいるかのようだ。「仲間が喜んでくれるのなら自分が笑われたって良いのさ」という心情なのだ。爽やかだ。

 

器が大きく、一途な心を持ち、爽やか。こうして見ると、王英は山賊という凶悪な犯罪者である設定さえ除けば、かなりの好漢であるように感じられる。実際、評価には先ほどの余象斗とは異なるものもある。

 

- **李卓吾**:王矮虎は性格的に聖人のようだ。好色だが、それを隠すことなく、命を懸ける場面でもその性質を貫いている。もし道学先生なら、多くの隠し事があり、偽善的な行動を取るだろう。王矮虎の率直さは評価をするべきで、一丈青(扈三娘)との結婚は誠実な報いだと言える。

 

<三元論に基づく特殊技能>

#### 一笑千金(導術)

**説明**: 王英は、裏表のない器の広い爽やかな言動によって周囲の重圧を緩和する能力を持っている。この導術は、彼の誠実さと親しみやすさに基づき、仲間たちの緊張や不安を和らげ、より良い環境を作り出す力を発揮する。

- **効果**:

  - **道具性(なし)**: この導術は、道具に依存せず、王英の人柄とコミュニケーション能力に基づく。

  - **思考性(中程度)**: 効果的な言動を行うためには、高い共感力と判断力が必要。

  - **関係性(とても濃い)**: 王英の導術は、周囲の人々との関係を強化し、協力と信頼を促進する。

 

#### 具体的な使用例:

  1. **緊張の緩和**: 王英は、重要な会議や戦闘前に爽やかな言動で仲間たちの緊張をほぐし、リラックスした雰囲気を作り出す。
  2. **信頼の構築**: 王英の誠実さと親しみやすい態度が、周囲の人々に安心感を与え、信頼関係を強化する。

 

※画像:DALL-E

 

作品紹介

 

著作紹介("佑中字"名義作品)
呑気好亭 華南夢録

呑気好亭 華南夢録

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