天朗気清、画戲鑑賞

三元論を基軸とした論理学探求の旅路へ

行動を伴わない想像力は何の意味も持たない?

L'Amant double

私:2017年のフランス映画『L'Amant double(邦題:2重螺旋の恋人)』を簡単に紹介してくれる?

 

ChatGPT:2017年のフランス映画『L'Amant double』(邦題:『2重螺旋の恋人』)は、フランソワ・オゾンが監督を務めた心理的スリラーです。この映画は、ロマン・デュリス、マリーヌ・ヴァクト、ジャクリーヌ・ビセットが出演しています。

物語は、若い女性クロエ(マリーヌ・ヴァクト)が主人公で、彼女は謎の腹痛に苦しんでおり、その原因を探るために精神分析医のポール(ロマン・デュリス)を訪ねます。クロエとポールは恋に落ちますが、クロエはポールには隠された一面があることに気づきます。彼の双子の兄弟であるルイスもまた精神分析医で、より危険で誘惑的な存在です。クロエは次第に二人の間の複雑で危険な関係に巻き込まれていきます。

この映画は、恋愛、アイデンティティ、欲望の探求を描いており、視覚的にも魅力的な作品です。フランソワ・オゾン特有のスタイリッシュで挑発的な演出が際立っています。また、心理的なスリルとエロティシズムが混在しており、観客を惹きつけるストーリーテリングが特徴です。

 

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 恐ろしく陰鬱で退屈なサスペンス映画。フランスの官能サスペンス映画でよくある演出で、意味もなく女性の裸体や生殖器をグロテスクに描写し続けるのは本当に勘弁して欲しい。私はあれをまったく芸術的だとは思えない。サスペンス作品を名作にする要素と考察するとすれば、それは「怪しさと妖しさ」「怖さと強さ」「静けさとやかましさ」の均衡と調和である。女性や男性の美しい容姿を描く事は確かに「妖しさ」を表現する上で役には立つが、その過剰な描写は単に気色が悪いだけで興ざめだ。

 作品の質に対する所感はともかくとして、中盤で主人公クロエが医師ルイから誘惑される場面において「行動を伴わない欲望は害だ」という引用句を口にしている。これは私が知る限りにおいては格言や諺に属するものではなく、おそらく医師ルイの誘惑を正当化する造語として表現されたものだろう。

 この表現が非常に稚拙な人生観しか表現していないという点は誰しもがすぐに理解出来る所であろう。ドストエフスキー罪と罰』に登場するスヴィドリガイロフの如く、「欲望に忠実であれ、やりたい事はすべてやれ」という世界がまかり通るのなら、我々人間はとっくの昔に滅びている。人間は欲望を制御する力を持つ。私は人間における極めて原理的な本能を三つに定義している。それは生存欲求(身体の健康を維持する欲求)、知的欲求(精神の健康を維持する欲求)、存在欲求(人間関係の健康を維持する欲求)である。これらそれぞれの欲求を制御する機構が人間とそれが構成する社会に内蔵されているからこそ、我々はここまで繁栄出来ているのである。

 またこれに類する名句がある。映画史に名を刻む喜劇王、イギリス人監督・俳優のチャールズ・チャップリンは次のように語った。

 

"Imagination means nothing without doing."

「行動を伴わない想像力には何の意味もない。」

 

 これについても一見すれば感慨深さを覚えるものの、よく鑑みればその論理性も破綻している。なぜなら、「想像」というのも「行動」という人間の出力反応の一部だからである。人間は想像をするだけで既に行動をしているのであって、その想像行動は当然ながら意味があるからこそやっているのである。その想像行動がその人物の将来に何らかの実益を与えるかどうかは分からない。つまり、その想像行動に「意義」があるのかは分からないが、「意味(目的)」はあるのである。人間の行動には全て意味がある。

 これは神秘的・形而上学的な性質を説明したい訳ではなく、生理学的な論点として述べている。人間が何かを行動する際には、現実世界の中から特定の事物事象に注目し、その注目した事物事象を感情(気質)で処理をし、そこで何らかの「意味(目的)」を生じさせて、行動として反応を出力する。

 よって、チャップリンは次の表現に調整した方が良かったかもしれない。これなら論理的な破綻は見受けられない。

 

"Imagination without execution has no significance."

「実行を伴わない想像力には何の意義もない(=頭の中で想像をするだけで、それを実際に現実世界で実行しなければ、利益が生まれない)」

 

 これで文章としての論理性は向上した。しかし、それでもやはり私はこの考えについても納得する訳にはいかない。ここで話が冒頭に戻る。我々が想像した事を何でも実行に移していたら、果たしてこの世の中はどのような世界になるというのだろうか?考えてから動く事も重要であるし、動いてから考える事も重要である。想像と実行が常に融合していなければ利益が無いなどというのは暴論だ。人間の三元的な行動を「想像」「言論」「実行」と考えるのなら、それぞれは三国志のように独立した国家としてお互いの均衡を保つべきであり、常に同盟を組まなければならないという法は無い。

 

※画像:DALL-E

 

作品紹介

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著作紹介("佑中字"名義作品)
呑気好亭 華南夢録

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