私:2001年のドイツ映画『Das Experiment(邦題:ES)』を簡単に紹介してくれる?
ChatGPT:2001年のドイツ映画『Das Experiment』(日本では『ES』として知られています)は、オリヴァー・ヒルシュビーゲルが監督し、モーリッツ・ブライプトロイが主演を務めた心理スリラーです。この映画は、マリオ・ジオルダーノが書いた小説『Black Box』に基づいており、その小説は有名なスタンフォード監獄実験(1971年実施)に触発されています。
映画の物語は、20人の男性が2週間の模擬刑務所実験に参加するところから始まります。参加者は「看守」と「囚人」の役割にランダムに割り当てられ、看守は非暴力的な方法で秩序を維持するよう指示されます。しかし、実験が進むにつれて、参加者たちは彼らの役割に没頭し始め、状況は次第にエスカレートし、暴力と支配のサイクルに陥ります。
『Das Experiment』は、権力、権威、個人のアイデンティティが極限の状況下でどのように変化するかを探求し、観客に強烈な精神的な影響を与える映画です。この作品は、実験の倫理、人間の本性、そして極端な状況下での人間行動の側面を探ることで、深く思索を促します。
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本作は演出、構成、展開、演技などの映画的要素を鑑みても、サスペンス&ホラー作品として非常に完成度が高い。その後、2010年には俳優エイドリアン・ブロディ、俳優フォレスト・ウィテカー主演によるアメリカのリメイク作品も製作された。当時、私がこの作品を初めて鑑賞した際に衝撃を受けた。作中のむごい出来事が「大学の実験中に本当に起きた」と知ったからである。作中の終盤にあるような殺傷沙汰には発展しなかったが、ほとんどそれに近い事は起き始めていたという話だった。
この社会実験は、人間が環境と役割からどのような影響を受けるかという法則性を実地的に解き明かそうとするものだった。私の論考で言う所の「存在欲求:繋がりたい、関係的に健やかでありたい」という事項に関する研究である。実験を取り仕切ったのは、心理学者のフィリップ・ジンバルドー教授。ジンバルドー教授は心理学部校舎の地下に、本物そっくりの模擬刑務所を建築。そこに22名の若い男性を入れ、彼らを無造作に「看守役」「囚人役」に区分。そうして両者が役柄を演じる中で、彼らの関係性の変化を観察した。
その実験結果は本作でも表現されていた通り、看守役の暴徒化や囚人役の無気力化が著しく見受けられるようになった。実験は当初2週間が予定されていたが6日間で強制的に終了し、実験後にPTSDを発症した囚人役の参加者が裁判を起こすまでに発展した。
だが改めてこの映画を鑑賞して本論を書こうとした今、私は更なる衝撃を受けた。何と、この「スタンフォード監獄実験」はジンバルト教授が主導した八百長だったというのだ。
2018年、映画監督であり作家のフランス人、Thibault Le Texier氏が『Histoire d'un mensonge: Enquête sur l'expérience de Stanford(嘘の歴史:スタンフォード実験に関する調査)』を発表した。ジンバルト教授は実験を強制的に終了しなかった理由について、「看守が残忍でしばしばサディスティックになり、囚人たちは反乱を試みた後、従順で協調性を見せたが、彼らの半数は心理的に深刻な影響を受けた為」と説明したが、実際には「看守を残忍でしばしばサディスティックにさせて、囚人たちが反乱を試みるように仕向けた後、従順で協調性を見せるようにし、その半数を心理的に深刻な影響を受けたような状況にする為」に、実験が進められたというのである。つまり、実験の筋書きは既に決まっていて、それに沿って彼らは計画的に看守役を暴徒化させ、囚人役を無気力化させていったという事だ。特定の組織や国家を批判しようとするメディアだとか、特定の人物を国家党首にする選挙だとか、そのような具合の"結論ありきの欺瞞行為"だったのである。
この「監獄実験は科学ではなく映画である」「ジンバルト教授は完全なるペテン師である」という衝撃の事実の裏側には、学術的なライバル関係との苛烈な競争、軍産複合体の政治的影響などが潜んでいた。2014年に日本の科学界で起きた「それでもSTAP細胞はありまぁす!」でお馴染みの論文捏造事件(理化学研究所のSTAP論文不正事件)でも同じような事が起きていた。ジンバルト教授が"映画監督役"を遂行しなければならなかったとすれば、これはむしろ、彼自身が「環境によって普通の人間もあらゆる悪事も犯すようになる」という理論を証明した事になるかもしれない。
人間の本能を制御する為には規則、倫理、美徳が必要であり、それらを意図的に蹂躙する行為は、妥当性のある特別な事由が存在しなければならない。思考という人間における最大の武器を使わず、愚劣な欲望で空っぽの頭と心を満たしたいが為に、それらの善悪の境界線を簡単に踏み越えようとする人間は、必然的に悲惨な末路を辿る事になる。善良に生きる人々が特に気を付けるべきは、そのような善悪の境界線を踏み越えさせようと、地獄の対岸から甘い笛を吹き続ける魔物の連中である。我々は思考し、意志を持ち、誠実さを示して、対岸の魔物の囁きを蹴散らさなければならない。
"Was für ein Glück für die Regierenden, daß die Menschen nicht denken!(人々が何も考えないことは、支配者にとってはなんと幸運なことか!)"
※画像:DALL-E
作品紹介