天朗気清、画戲鑑賞

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【機胡録(水滸伝+α)制作メモ 042】鄧飛

鄧飛

※補足1:生成画像は全てDALL-E(Ver.4o)を利用している。

※補足2:メモ情報は百度百科及び中国の関連文献等を整理したものである。

※補足3:主要な固有名詞は日本訓読みと中国拼音を各箇所に当てている。

 

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水滸伝水滸伝/shuǐ hǔ zhuàn)』の概要とあらすじ:中国の明王朝の時代に編纂された、宋王朝の時代を題材とした歴史エンターテイメント物語。政治腐敗によって疲弊した社会の中で、様々な才能・良識・美徳を有する英傑たちが数奇な運命に導かれながら続々と梁山泊(りょうざんぱく/liáng shān bó:山東省西部)に結集。この集団が各地の勢力と対峙しながら、やがて宋江(そうこう/sòng jiāng)を指導者とした108名の頭目を主軸とする数万人規模の勢力へと成長。宋王朝との衝突後に招安(しょうあん/zhāo ān:罪の帳消しと王朝軍への帰属)を受けた後、国内の反乱分子や国外の異民族の制圧に繰り出す。『水滸伝』は一種の悲劇性を帯びた物語として幕を閉じる。物語が爆発的な人気を博した事から、別の作者による様々な続編も製作された。例えば、『水滸後伝(すいここうでん/shuǐ hǔ hòu zhuàn)』は梁山泊軍の生存者に焦点を当てた快刀乱麻の活劇を、『蕩寇志(とうこうし/dàng kòu zhì)』は朝廷側に焦点を当てた梁山泊軍壊滅の悲劇を描いた。

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鄧飛(とうひ/dèng fēi)

 

<三元論に基づく個性判定>

30番 **強い生存欲求**、**とても弱い知的欲求**、**強い存在欲求** - **「社交的な実行者」** - 知識よりも実際の行動と他者との交流を重視する。

 

<概要>

鄧飛(とうひ/dèng fēi:邓飞)は幅広く活躍する同姓同名の俳優がおり、百度などで検索をすると彼の方が優先して表示される。ちなみに、彼は2011年製作の中国大河ドラマ水滸伝』にも出演し、そのまま鄧飛(とうひ/dèng fēi)役を演じている。西郷隆盛という俳優が西郷隆盛役を演じるような話であるから面白い出演だ。『水滸伝』における原作の鄧飛(とうひ/dèng fēi)はそれほど厳密なイメージが描き込まれていないので、頑強そうな俳優であれば演じる事が可能だろう。外見としては「赤い目を持つ」とあり、それに由来してあだ名は「火眼狻猊」。襄陽府の出身で、元々は孟康(もうこう/mèng kāng)、裴宣(はいせん/péi xuān)と共に飲馬川を占領していた山賊。一条の鉄鎖(铁链:モーニングスター分銅鎖に類似する形状のチェーン武器)の使い手。後に楊林(ようりん/yáng lín)や戴宗(たいそう/dài zōng)と出会い、梁山泊勢力へ加わった。大聚義(だいしゅうぎ/dà jù yì)の際は序列49位に定まり、「騎兵小彪将兼遠距離斥候隊長」に任じられた。最終戦となる方臘(ほうろう/fāng là)の征伐戦において、杭州で殉死。戦後、朝廷から義節郎の称号を追封された。

 

<あだ名の「狻猊」はシーサーのような獅子>

狻猊(さいげい/suān ní)は中国の伝説上の動物であり、その姿は獅子に似ている。狻猊(さいげい/suān ní)を模した置物などを見ると、沖縄のシーサーを強面にしたような印象だ。龍の九子の一つに数えられており、序列は第五位(一説では第八位)。虎や豹を食べる事すらあるという強靭ぶりな一面もあるが、普段は静かにしている事が大好きで、お香の煙火などを好むそうだ。逸話によっては阿弥陀佛が狻猊(さいげい/suān ní)の持つ忍耐力に感心し、自分の下に置いて坐騎にしたというものもある。この逸話に由来して、仏座や香炉に狻猊(さいげい/suān ní)の姿が描かれる事がよくある。そうした絵の中で、彼はだいたい静かに煙を吐いている。

 

※狻猊(さいげい/suān ní)は歴史の変遷と共に多彩な設定が加わった動物。『水滸伝』が制作された明王朝時代、董斯張の『吹景集』によると、「頭が一つ、体が二つ、尾が二本、足が八本、耳と尾が豚に似ていて、頭が虎に似ており、毛は兎のようで、尾の細かい毛は人の髪に似ている」「狻猊が出現する事は戦乱の予兆である」といった事項が記されている。

 

<原型と評価>

邓飛は宋元時代の史料には見当たらない。『大宋宣和遺事』や『宋江三十六人贊』、元雑劇の水滸戯などの早期の水滸物語や文学にも見られず、『水滸伝』小説の創作であると考えられる。活発で屈強な人物でありそうだが、裴宣(はいせん/péi xuān)に自分の序列を譲ったり、戦地では何度も仲間の救出に貢献しているので、思いやりのある人物であったと考えられる。圧倒的な力はあるが、静かに情勢を判断しながら周囲に身を尽くす様子は、まさにあだ名の狻猊に通じる所がある。それは彼の惨烈な結末にも現れている。方臘(ほうろう/fāng là)の征伐戦において、鄧飛(とうひ/dèng fēi)らは杭州北関門の攻撃に挑んでいた。この時、"巨人"の索超(さくちょう/suǒ chāo)が敵軍の将軍、石宝を追っていたのだが、返り討ちに遭ってしまった。この仲間の窮状を目にした彼は急いで索超(さくちょう/suǒ chāo)を救おうとしたのだが、石宝の馬の速さに対応しきれず、逆に真っ二つに切られてしまった。仲間を助けようとして自らの命を賭した彼の姿から、非常に強い仁義が感じられる。

 

<人肉食べたの?>

上述のような善良な人物像が描かれている一方で、彼の登場場面では「原是襄阳关扑汉,江湖飘荡不思归。多餐人肉双睛赤,火眼狻猊是邓飞。(元は襄陽の関にいた好漢、江湖を漂い家に帰ることを思わず。人肉を多く食べたため両眼が赤く、それにゆえに火眼狻猊とは鄧飛なり。)」という賛辞が添えられている。以前の孫二娘(そんじじょう/sūn èr niáng)と張青(ちょうせい/zhāng qīng)の記事において「人肉」に関する事項に触れたが、『水滸伝』では何かと食人文化が話題に上る。当時も現代同様に人の肉を食する文化は特異なものであったが、「復讐」「生存」といった特殊な事由から行われる事もあった。鄧飛(とうひ/dèng fēi)が好んで人肉を食べたとは考えにくいので、過去に「復讐」か「生存」の理由から口にした可能性がある。ただし、『水滸伝』では彼が人肉を口にした場面が存在しないので、目が赤い事からそう揶揄されただけという可能性もある。彼の人物描写の説得力を上げる為に設定を改修するとすれば、前者のように「理由があって過去に人肉を食した」か、あるいは後者のように「そもそも人肉は食べておらず目が赤いだけ」とするか、どちらかの逸話を適用する事が有効であると思われる。ここはシンプルに後者で良いのではないだろうか。

 

<三元論に基づく特殊技能>

#### 恩重如山(心術)

**説明**: 鄧飛は、信頼する仲間が窮地に陥って救出に当たろうとした時に普段以上の力を発揮できる能力「恩重如山」を持っている。この心術は、彼の強い信念と仲間への深い愛情に基づき、困難な状況でも圧倒的な力を発揮する。

- **効果**:

  - **道具性(なし)**: この心術は、道具に依存せず、鄧飛の精神的な力と信念に基づく。

  - **思考性(中程度)**: 仲間を救出するためには、高い判断力と戦術的な思考が必要。

  - **関係性(とても濃い)**: 鄧飛の心術は、信頼する仲間との絆を強化し、チーム全体の結束力を高める。

 

#### 具体的な使用例:

  1. **仲間の救出**: 鄧飛は、信頼する仲間が危険にさらされたとき、その仲間を救出するために通常以上の力を発揮し、敵を圧倒する。
  2. **士気の向上**: 鄧飛の行動は、仲間たちに勇気と希望を与え、全体の士気を高める。

 

※画像:DALL-E

 

作品紹介

 

著作紹介("佑中字"名義作品)
呑気好亭 華南夢録

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