天朗気清、画戲鑑賞

三元論を基軸とした論理学探求の旅路へ

ケイジ効果は目に宿る

Willy's Wonderland

私:2023年製作のホラー映画『Five Nights at Freddy's(邦題:ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ)』を簡単に紹介してくれる?

 

ChatGPT:2023年のホラー映画『Five Nights at Freddy's』(邦題:ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ)は、人気ビデオゲームシリーズを原作とした作品です。物語は、古びたピザレストラン「Freddy Fazbear's Pizza」に夜間警備員として雇われた主人公の青年が、夜中にレストラン内で不可解な出来事に直面するという内容です。アニマトロニクスの動物キャラクターたちが昼は無害であるかのように見えますが、夜になると生きているかのように動き出し、警備員に脅威をもたらします。映画は、このレストランでの恐怖の夜をサバイバルする主人公の戦いを描いています。

 

 

私:2021年製作、ニコラス・ケイジ主演のホラーアクション映画『Willy's Wonderland(邦題:ウィリーズ・ワンダーランド)』を簡単に紹介してくれる?

 

ChatGPT:2021年のホラーアクション映画『Willy's Wonderland』(邦題:ウィリーズ・ワンダーランド)は、ニコラス・ケイジが主演する作品です。物語は、無口な主人公が車の故障により、閉鎖されたアミューズメント施設「ウィリーズ・ワンダーランド」で清掃の仕事を強いられるところから始まります。しかし、その施設のアニマトロニクス人形たちは邪悪な存在に取り憑かれており、施設に入った者を次々と襲います。主人公は、凶暴なアニマトロニクスたちを次々に倒しながら、夜明けまで生き延びるための戦いを繰り広げます。ニコラス・ケイジの無口なキャラクターと派手なアクションが見どころです。

 

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 珍妙で奇天烈な作品を立て続けに鑑賞してしまった。だが、たまにはそれも良いだろう。魂は時にジャンクな文化を欲するものだ。私が鑑賞した『Five Nights at Freddy's』と『Willy's Wonderland』。この二つの映画はプロットがほとんど同じ。アメリカで人気のあるホラーゲーム『Five Nights at Freddy's(通称:「FNaF」)』シリーズを源泉とする作品で、内容は「店舗の夜間警備員が悪霊の宿った機会人形と戦う」というもの。それ以上でもそれ以下でもなく、本当にただそれだけである。(厳密に言えば、『Willy's Wonderland』の監督ケビン・ルイスは『Pale Rider (1985)』と『Killer Klowns from Outer Space (1988)』から着想を得たと語っており、FNaFとの関連性は否定している。だが、鑑賞者からすればどちらも同じである。)

 改めて言うが、どちらも珍妙で奇天烈な作品であって、鑑賞者の選り好みをかなり分けるものである事には違いない。どちらも大手映画レビューサイトimdbでは10点中5点台の低評価を受けており、実際それは妥当な評価だろうと言わざるを得ない。しかし、『Willy's Wonderland』は俳優ニコラス・ケイジの独特な存在感が相変わらず抜群で、『Five Nights at Freddy's』の千倍面白く感じるから不思議だ。

 どれだけ陳腐な物語であっても、俳優ニコラス・ケイジが登場するだけ何となく作品が成立してしまう。(これは以前の記事で取り上げた映画『8mm』でも触れた話題だ。)実は、映画愛好者はこれを「ケイジ効果」と呼んでいる。この「ケイジ効果」に関しては、用語解説サイトによって次のように説明がなされている。

 

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Cage Effect

 

The Cage Effect (or Cage Syndrome) is a curious consequence, whereby a film containing more than 30 minutes of scenes with Nicholas Cage will become instantly worth watching; regardless of the quality of the script, concept or acting.

This effect is most notable in especially bad films as the appearance of Cage converts any drama into a yet unnamed form of humour. The greater the intended drama the more hilarious Nicholas Cage will make the scene. Thus during scenes in a film that should be serious, moving or tragic the audience only concentrates on how Nicholas Cage will deliver his next line.

 

ケイジ効果

ケイジ効果(またはケイジ症候群)は興味深い現象であり、ニコラス・ケイジが30分以上出演する場面を含む映画は、その脚本、コンセプト、演技の質に関係なく、一気に「見る価値のあるもの」になるというものである。

特に質の低い映画でこのケイジ効果は顕著に表れ、どのようなドラマであってもケイジの登場によって未だに名前が付けられていない種類のユーモアに変換されてしまう。またドラマ性が意図されたものであるほど、ニコラス・ケイジは場面をより面白いものにしてしまう。したがって、映画のシリアスで感動的、悲劇的であるべき場面においても、観客はニコラス・ケイジが次の台詞をどのように言って自分を楽しませてくれるのかだけに集中してしまう。

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 論理学者としてこれは実に気になる命題だ。我々はニコラス・ケイジという人間から如何なる力の影響を受けているのだろうか。彼は紛れもなく映画世界に名を刻む名俳優であり、彼無しでは絶対に成立しなかった傑作が多数ある。それだけの珠玉の芸術のキャリアを持ちながら、なぜかニコラス・ケイジは時に我々鑑賞者の心を不安定にさせ、ミーム(悪ふざけ)に近い感覚の笑いを心の中に呼び起こす事がある。

 英国BBCはこうした冗談めいたケイジのキャリア汚染を否定して、「ニコラス・ケイジはもっとも誤解された、この時代において活躍している最も偉大な俳優の一人だ」という記事を出しているのだが、そのとびぬけて生真面目な記事がまた何やら冗談めいた雰囲気を醸し出してしまう。ケイジ効果がまったく無関係な世界の文字の上にも踊ってしまうのだ。(もちろん、この複雑で怪奇な皮肉の現象は、その記事の執筆国が英国であるというのも無関係ではない。)

 「目」だと思う。まったく科学的な根拠はないが、私は「ケイジ効果」のような「なぜかその人間に特別な注目をしてしまう」という現象の主な原因が「目」にあると考える。日本には「目は口ほどに物を言う」という慣用句がある。中国語の「眼睛是心灵的窗口」、英語の「The eyes are the window of the soul」、これはどちらも「目は魂の窓だ」という言い方だ。ケイジの独自の魅力は(おそらくは当人も気付いていないに違いないが)目に宿っているのである。

 「目」は、視覚的な生き物である我々人間にとって極めて重要なモジュールだ。血管と神経が複雑に張り巡らされた構造で、単純なカメラ機能のみならず、その時に心に浮かんでいる深層の感情や、頭にある相手に対する希望なども巧みに表現するように出来ている。私の三元論に照らし合わせると、目というモジュールが持つ機能性は以下の3点に集約される。

 

- 動体感知(現実空間の単純な映像の認識)

- 感情表現(精神世界の観念的な情報の自動送信)

- 関係意思(人間関係の意図的な希望の送受信)

 

 「目の力」はこれらの三要素の組み合わせによって生じる。その組み合わせを八つの基本類型にまとめると、それは以下の通りとなる。

 

  1. 弱い動体感知・弱い感情表現・弱い関係意思
  2. 弱い動体感知・強い感情表現・弱い関係意思
  3. 弱い動体感知・弱い感情表現・強い関係意思
  4. 弱い動体感知・強い感情表現・強い関係意思
  5. 強い動体感知・弱い感情表現・弱い関係意思
  6. 強い動体感知・強い感情表現・弱い関係意思
  7. 強い動体感知・弱い感情表現・強い関係意思
  8. 強い動体感知・強い感情表現・強い関係意思

 

 私たちはよく「何を考えているかよく分からない人」と出会う事がある。(あるいは、そう他人から言われてしまう事があるという人がいるかもしれない。)それは上述の三要素のいずれか、あるいはその全てが何らかの理由で脆弱である事が主な原因ではないかと私は考える。例えば、「目の力」が1番に属する人物である場合、その人物は何を見ているか分からないし、どういった感情を持っているか分からないし、相手に対して何を望んでいるかも分からない。これは自己意識や訓練で大きく変化するというものではなく、極めて"珍妙かつ奇天烈な"人間の先天的な生理現象として生じるものであると私は考える。(もちろん、多少は意図によって強化または弱化する事が出来るかもしれないが、その範囲も限られていると私は感じる。)

 ケイジは紛れもなく8番の目の力を持ち、それが天賦の魅力として発動する事でケイジ効果が生まれている。映画『Willy's Wonderland』はこの私の目の力に関する考えを裏付けるひとつの良質な題材だ。冒頭10分間、ケイジは何も語らずにずっとサングラスを掛けたまま場面に登場する。この時点で、私はこの俳優に対して特別な魅力を覚えない。だが、その後にサングラスを外した途端にケイジ効果が発動する。彼の表情を見るたびに、何かゾクゾクするような圧倒的な存在感を覚える。そして17分付近、ケイジが荒れたキッチンをただじっと眺める様子がクローズアップされる場面があるが、このまったく何の意味もない場面ですらとんでもなく面白い。70分付近、彼がひとりでピンボールを遊び続けるアドリブシーンなどは、もうたまらんのだ。

 もう一度言うが、今回はまったく科学的根拠のない私の空想記事だ。だが、一理あると思わないか?

 

※画像:DALL-E

 

作品紹介

 

著作紹介("佑中字"名義作品)
呑気好亭 華南夢録

呑気好亭 華南夢録

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